2017年9月30日食環教講演会 牛島定信理事長『変わりゆく子どもたちの成育環境』全内容

以下は2017年9月30日におこなわれた食環教講演会『変わりゆく子どもたちの成育環境』にて、当会理事長牛島定信が語った全内容です。

・インターネットへの依存による考え方の変化

「僕は引きこもりじゃないですか」

こう言ってやってくる患者が最近増えています。自分で自分のことを診察してしまうんですね。はじめてそういう人が来たときには驚きました。こういう人を解離性パーソナリティ障害といいます。

普通は学校で友達関係を作って行く、年を取って大人になって行く。こんなことで困っているとか言われればそれに対して精神科医は診断しますけど、自分で診断してきて「きっとわたしはこうである」と自分でその結果を医者に言う。社会に認知されている病名で概念化すればそれで終わり。まさにこれはコンピューターの世界に生きていると言っていいでしょう。その人が言いました。小学校の頃から学校に行く行かないで争って、お兄ちゃんに黙らされる。そういう家庭環境があって、それを友達に話したら「それは虐待じゃないの」と言われたと。それでああそうか、これは虐待かと。すると医者のところに来て、「わたしは虐待を受けた子どもである」と宣言し、それで治療してくれというんですね。確かに学校に行くのに苦労していて、それが母親に影響し、父と兄も何か言ってきて困る、どうにかしてくれという心配じゃない。わたしはこうだから精神病じゃないかと本人から言ってくるんですね。

精神病院というのは、昔ながらの統合失調症等の治療のための病院だと若々しい女の子の入院できるような環境ではないんです。ベッドの上で縛られたりするんです。その恐れを知らないですね。そこに入院させてくれといわれてこちらの方が驚いちゃう。そこに虐待という言葉が大きく働いているんですね。いま世の中では虐待虐待と大騒ぎです。

それともうひとりは自分はピアニストになりたいというんですけど、この子も学校でうまくいかない。ついに高校も卒業が見えてきたんだけど、半年以上学校を休んでいるという。このままだと高校卒業できそうにない。そこでいろいろと考えあぐねて、どこかで指導されたのかもしれないけれど、このごろ通信制高校というのがあるんですね。そこでわたしは通信制高校に行きたいというのです。ところがこの子は受診するのに大変なのです。クリニックの外まで母とふたりで来ているけど、一緒に受診するのか、ひとりで受診した方がいいのかどうかもめているって言うんですね。それでよく話し合って来てくれっていったら一人で来たんです。お母さんは何て言っているのって聞いたら、わかりませんっていうんですね。それでお母さんにあとで聞きますと憤然としているんです。通信制高校の話があるみたいですねって母親に聞くと、お母さんはわたしを怒鳴りつけるようにして、「先生は娘を通信制高校にやれっていうんですか」っていうんですよ。相手をするのに困るくらい叱りつけられました。学校に行く行かないと言うレベルを超えて、感情的な喧嘩になっているんですね。それでその通信制高校というのも、似たような人が集まりますので虐待や引きこもりなどの巣窟のようになっている。大人の世界で使っている言葉を子どもが使って自分のことを理解した気になっている。実際に虐待を受けたり、引きこもりだったりするというレベルより軽度のものでも、「虐待を受けたから」とか「引きこもりだから」と言って、そのような状態になっていってしまっている。言葉によって自分の状態を決めつけてしまう。最近気付きました。まだこんなことを言っている人はいませんけど。

小学校中学校高校くらいの青年たちが訴える問題行動というのは変わりました。わたしが精神科の医師になったのは1963年です。54年ほどになります。だからいま中学高校の生徒、子どもを連れて来る親御さんの歳より、わたしの医者の経歴の方が長いんですね。わたしが医者になってから生まれた方がいま親になっている。だからわたしの時間的視点は、親御さんの一生より長いので、きっと親御さんが知らないことをわたしは知っているんです。年を取るとはそういうことです。

登校拒否という言葉が出てきたのは1960年代です。学校に行けない、行きたがらない。当時学校に行けないというのは、いじめられたのではなく、適応できなかったんです。いまと理由がちょっと違うんです。恥をかいて行けなくなったとか、面目ないとか、申し訳ないとか、そういう悩みが多かったんです。その頃、わたしたちはそういう子どもたちを連れて思春期キャンプに連れて行ったものでした。そうすると一週間ばかりみんなと一緒に楽しんでいると、すっかり顔色まで変わって、それでだいたいよくなったものです。1960年代前半の子どもたちはそれでよかった。頭はいいし切れるんだけど、不器用でした。マッチで火をつけることができないとか、そういう幼さがあって驚いたんですけど、とりあえず優秀でした。でも現実的なことがあまりできない子どもたちという印象がありました。そういう子どもたちにがんばって学校に行こうなんて言うと、大変な状態がうまれました。登校刺激といわれ、それはいけないということになっていました。

ところが1980年、アメリカに新しい診断基準ができて、全世界にあっと言う間に広がった。精神医学改革のようなことが起きた時代。このとき、境界性パーソナリティ障害という病名がはじめてできました。それからその症状を持つ人がわーっとでてきました。どういう人たちかというと、ちょっとしたことで憂鬱になって死にたくなって手首を切るような若い女の子です。それから学校に行けなくて家に籠っている子どもたちで、ちょっとした刺激で「そんなことじゃ駄目じゃない」と言われたぐらいで家庭内暴力を振るう青年とか、そういう人たちが多くなってきました。そういう人たちというのは、学校に行けないとか、社会に出て行けないとかいうことが密かに気になってはいるんです。しかしそれをいろいろと気にすることはなかなかもう負担になってできない。それでどうするかというと、お父さんがどうした、お母さんがどう言ったとかって、親との問題にすり替えるんですね。お母さんがそんなこと言うから僕は憂鬱になるとか、そういうことのせいにしているうちに、お母さんの育て方が悪かったという問題にしてしまう。そう言われると母親というものは必ずしも自分に自信がある訳ではないですから、少し自分の責任を感じるんですね。そうするとそれに負けてはならないので反論するとそこで喧嘩になる。そういう症状の境界性パーソナリティ障害でした。この治療はどうするかというと、親子喧嘩なんてつまらないことしてないで、もっとやりたいことをしなさいって社会の適応の方に目を向けてやるとだいたい治っていった。だいたいこういう人というのは、現代では十年十五年はあっと言う間にすぎてしまうって言ってますが、1980年代頃までは一年程度でよくなりました。

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牛島定信食環教講演会「変わりゆく子どもたちの成育環境」

2017年9月30日の食環教講演会『変わりゆく子どもたちの成育環境』が開催されました。
牛島定信先生は社会の変化とともに境界型バーソナリティの人たちが生まれていることを指摘なさりました。
一時期はその解決に団体でおこなうスポーツが有効でしたが、次第にそれもエリートを育てる先鋭的な組織となったところが多く、多くの青少年にとっては生きにくい組織となっていきました。同時に、子どもに教えるスポーツにも変化が現れたことを指摘して下さいました。
詳細については次号、38号のドーンに掲載の予定です。お楽しみに。
以下は会場でいただいたアンケートに寄せられたご感想やご意見などです。クリックすると少し大きく表示されます。
ご参加の皆さん、ありがとうございました。

まず、わかり易いご講演を感謝致します。新聞やTVの報道、
学校教師から、発達障がいの児童の多さ、そして考えにくい理由での殺人、そして離婚の多さ、結婚しない40歳代50歳代の多さについての原因が少し理解が進みました。
私たちの未来である次世代の人たち、子どもたちに対して、まず理解し、そして接する時に、とても参考になるお話しでした。
ありがとうございました。
(ペンネーム 自治体議員)

子供の未来への想いがつまっている会なのだと感じました。
荒れている子供だけを見ていると変化しないが母がおちついてくると子供も変化するということは母親に何らか原因がある、でも母がおちついていられない原因は…とだんだん元をたどっていくと 人類が何故悩むのかの原因=心が何なのかにいきつくのかなと思いました。
牛島先生が精神科医たちが無力感を感じているとおっしゃったのは心が何なのかがわからないからなのかもしれないと思いました。
ありがとうございました。

インターネットを発端にし、情報社会は加速している様に思います。
20世紀までが分散(分類・分化)の時代とすれば、今世紀は、統合の時代ではないのかと思いますが、加速する情報の洪水の中で、どう統合するかを考えねば、社会の中で生きづらくなる者があふれる様にも思いますし、それを端に今まで考えられなかった様々な病気や社会現象が、顕在化してくるのではないでしょうか。
ノスタルジックになりすぎない新しい時代に沿った手法も、検討する必要に迫られていくようにも思います。

政治的背景、化学物質の蒦延など多岐にわたるお話もいつも聞かせて頂いて感謝しております。

たいへん興味深く、解りやすくお話いただき聞かせていただけました。
ITをあやつり、購買活動を含め生活のすべてをインターネットにたよる世代を、身近に発見し感じていた違和観を理解し考えていく上で、たいへん良い講演をありがとうございました。

若い子育ての方々をお誘いしましたが、他の約束がすでにあって無理でした。
本日の貴重なメッセージを伝えたいと思いました。
私の孫はまだ7才ですが、社会的知恵だけが発達する『若年寄』というメッセージに、ドキンと致しました。
他にも「自己愛的な怒り」などなど、濃密なお言葉に驚きました。
牛島先生の著書を読みたいと思いました。
この会が益々ご活躍をと思います。
よろしくお願い申し上げます。
最後に子供の心が家庭の中にあるというメッセージにも感動致しました。
「小さい子は勝手なモノ」親が安心する事!! 学びました。
ありがとうございました。

すべてがわたったというよりも、ぼんやり納得したという感じ出したが、とても良かったです。
孫(1才5ヶ月)のお守りをしていますが切大切に可わいがり夫婦を見守っている私です
これからの成長を先生の話を思いだしながら行きたいと思います。

こどものスポーツ現場で最大の問題は親の関わり方です。
本来、横の関係を形成するはずのスポーツ集団が、サッカーセクトに見られる勝利至上主義が上下関係を煽る状況を親が加担してしまっているように思えます。
それを防ぐためには環境を変えるだけだは片付かない難しい問題であることに気がつくことができました。

少し涙もでて来ました。
何だか理解できるまで、かかるかもしれませんが、あまり、気むずかしく考えなくてもありのままで、生活して行けそうです。
私のできる事を無理なく!! (家庭)(友達)(近所の人達)
ありがとうございました。

☆時代に合った大人のなり方があるというお話を聞いて、26才の息子ですが、未熟な母親、父親の成長と共に、大人になっていけばいいのだなあと少し楽になりました。
人生100年時代なので、健康に気をつけて 楽しく 自分らしく 生きていけば いいと思いました。
これからのかかわりが大事かな。
病院に行けば何かの病名はつくとおもいますが、行きたくない様です。
(今日はおなかの具合が悪くて 外にでられないとか言っています。)

とてもおもしろかった
私たちの人生の道をもうらした話でたいへんおもしろかったです
しらないうちに社会の流れにのっていたことへの反省しきり、自分で考えること 社会の中の自分の立場をしっかりみきわめて生きていかないとたいへんなことになると
思った
とても有意義な講演でした。もっと大勢な人がきいた方がよいと思うので もう一度先生の講演会をのぞみます。
ほんとうに子どもらしい子どもがいない
ドーンにのっていた 子どもの里の子どもをみてみたいと思った

時代の流れで成育環境が変わってきた 話しを聞き 現代のづらさ、大変さを強く感じました。
子供との関わりをまたさらに見つめ直し考え 行動して行きたいと思います。あたたかい家庭でありたいので。
ありがとうございました。